Voice #02|大阪湾のシラス加工現場 ― “鮮度をつくる人たち”

1. 6月の大阪湾、シラスの季節

今年の大阪湾は、春に続いてシラスがよく獲れています。
漁師の表情にも、どこか明るさが戻ってきました。

大阪湾のシラスは、全国の産地の中でも“人気者”です。
その理由は、近年、漁師と漁協が一体となって進めてきた 鮮度管理流通スピード にあります。

船に水揚げされたシラスは、冷やし込まれた海水で素早く洗浄され、
氷を足しながら温度を5度以下に保ちます。
そのまま専用の運搬船で港へ戻り、競りにかけられたシラスは、
口を開けたトラックに次々と積み込まれ、加工場へと運ばれていきます。

まさに スピード勝負の世界 です。

2. 岸和田の加工場へ

今回訪れたのは、岸和田漁港から数分という立地の加工場。
到着したシラスは、次々と処理されていきます。

釜から立ち上る湯気。
冷気が混じる加工場の空気。
作業員の手は止まることがありません。

ここでつくられるのは、旬の味覚「釜揚げシラス」。
柔らかく、甘みがあり、ごはんにもお酒にもよく合います。

3. 職人の勘がつくる“味”

生のシラスは、ボイラーで沸かした塩水に短時間だけ漬けられます。
その後、水切りをして温度を下げ、ザルに上げて冷蔵庫で一気に冷やす。
この一連の工程は、数字だけでは管理できません。

管理すべきは、
・温度
・時間
・そしてその日の魚の状態

ベテランの作業員は言います。
「その日その日で魚も違う。そして取ってきた漁船ごとにも魚は違う。」

この“違い”を見極めるのが、長年の経験と勘。
加工場の職人たちの技術が、大阪湾のシラスの味を支えています。

4. 新しい人気者「生シラス」

近年、加工場では新しい人気商品が生まれました。
それが 冷凍の「生シラス」 です。

本来、生シラスは漁港から近い地域でしか食べられない“旬の味”。
しかし、冷凍技術の進化により、
新鮮なうちに急速凍結をかけることで、
解凍後も“生”として楽しめるようになりました。

ただし、凍結時間を短くするために、
少量を小袋に分けて凍結するという手間のかかる作業です。
生産量にも限界があります。

それでも、海鮮丼や寿司ネタとして人気が高く、
「とても生産が追いつかない」と社長は笑います。

5. 加工現場の現実

シラス漁は、漁師と漁協の努力で大きく進歩しました。
若い漁師も増え、収入も安定しつつあります。

しかし、加工現場には別の課題があります。

加工場の社長が、静かにこう言いました。
「ここらで加工してるのは、うちともう一軒だけになった。」

大阪湾で獲れるシラスの約8割は、
兵庫や和歌山の加工場へ運ばれていきます。
それらの地域には古くからの加工場が多く、
ネームバリューや販路の強さもあります。

一方で、大阪の加工場は減り続けています。
人手不足、後継者不足、設備投資の負担――
現場の課題は深刻です。

6. 「大阪の原料を大阪で加工する」未来へ

大阪湾のシラス漁が元気を取り戻しつつある今、
加工現場の存在はますます重要になっています。

漁師 × 漁協 × 加工場。
この三つがそろって、初めて大阪湾のシラスは“商品”になります。

「大阪の原料を大阪で加工する」。
そんな流れが、もう一度大きく育ってほしい。

加工場で働く人たちの技術と誇りを、
次の世代へつなぐために。

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